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 今日だけで幾度繰り返したかわからない挨拶をまた口にすると、デルフィカの町長は心底驚いたという顔をしてから礼儀正しくそれを取り繕った。

「これはこれは。初めまして先生。私がこのデルフィカの町の長を努めさせていただいております、フォン・ガラードです。よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、お願いいたします。若輩ですが精一杯努めさせていただきます」

「いやいや、お若いからこそ努力して下さるというものでしょう。……ちなみに、先生はお幾つですか」

「十九になります」

 見目から判断したよりは歳が行っていると安心したのか、それともやはり若造だったかと落胆したのか。微妙な表情を町長がその顔に浮かべ、けれどすぐに消して見せた。

 どうやらデルフィカの町長は、歳に見合った狡猾さ、慎重さを身に付けているようだ。

「十九ですか。医師免許はいつお取りに?」

「十六の時です」

「ほお。それはずいぶんと早い。セルリアン皇央学院でもさぞかし秀才でいらしたのでしょう」

「いえ。僕は、皇央学院は卒業していません。師について、独学で学びました」

 リベルテの答えにガラードが今度こそ心底驚いたという顔をする。

「ほお!……失礼だが、皇央学院を卒業なさったお方でも医師免許をとるには相当の努力が必要と聞いております。独学で十六才で免許をお取りになったとは、それは相当なものですな」

 見事な白髪で飾られた頭を軽く振り、感じ入ったというようにガラードが唸る。

 いささか芝居がかって見えるのは長い口ひげで表情が見えないせいだろうか。

「そんな方をこのデルフィカの医師としてお迎えできるとは、本当にありがたいことです。どうぞよろしくお願いいたします、先生」

「はい。こちらこそ。それでですね、町長。1つお願いがあるんですが」

「はい。なんでしょう」

「残念ながら、前の先生が残してくれたカルテがほとんどないんです。町の方のご病気を把握するために、一度、健康診断をひらいてよろしいでしょうか」

「健康診断ですか」

「はい。庁舎の一角を貸していただければなおありがたいんですが。後は、町の方々への広報の手段を教えていただければ」

 リベルテの頼みに、ガラードが頷く。

「わかりました。手配しておきましょう。庁舎の一階に昔医務室として使われていた部屋がありますので、そちらを二、三日で使用できるようにしておきます。日にちは先生の方でご自由に決めて下さって結構。町への報せは、庁舎の広報担当の方に話を通しておきます」

「本当ですか。ありがとうございます、助かります」

 ここまであっさり話が通るとは思っていなかったので、リベルテはほっとした。町の片隅でも使わせてもらえればありがたいと思っていたのだ。

「いえいえ、町のためですから。私も歳ですからね、一度先生に診て戴かねば」

「はい。いつでも」

 











 町長との話し合いの間はずっと黙っていたゼファが、部屋を出るなり大きく伸びと欠伸した。

 丁度通りかかった女性の事務員がその欠伸を見てくすっと笑うのににこやかに手を振ってから、ゼファが口を開く。

「なかなか巧くやったじゃん。先生」

「巧く?」

「あの町長、計算高いからね。利用価値があるかどうかでコロッと態度が変わるんだよねぇ」

「利用価値、ですか」

「そうそう」

 ゼファが頷く。リベルテは首を傾げた。

「……僕に医者として以外の利用価値があるとは思えませんが」

「十六で医師免許取るってのはね、先生。天才かコネだよ」

 あっさりとゼファはリベルテの立場を二分割してみせた。

「んで、先生はどっち?」

「……答えにくい質問ですね。死ぬほど努力した凡才、じゃ駄目ですか」

「駄目って事はないけどさぁ。……死ぬほどの努力、なんて言葉でしかなかなかお目にかかれないけど」

 なにがおかしいのかくつくつとゼファは肩で笑っている。

 どうにも掴みがたい男だ。チョコレートをくれるような繊細さもあるかと思えば殊更に露悪的な台詞を吐いたり、人を試すようなことをしたり。

 ふと、リベルテは気付いた。

 今日一日中、自分は計られているのだ。

 ゼファの中にあるものさしで。

「セルリアン皇央学院卒じゃないってのは、正直オレも意外だなぁ。絶対そうだと思ってた」

「そうですか?」

「ああ。先生、貴族でしょ」

 建物の外に出る。天央鉄道の駅から大通り一本の所に建っている庁舎の付近は町一番賑やかな場所だ。

 商店の間には路地の片隅に露天が開き、買い物を楽しむ町の人々が行き交っている。

 ちらほらと貴族の姿も垣間見えた。観光客だろう。

「おっと……もうこんな時間か。腹が減ったね、先生」

「……そうですね」

「じゃ、メシ食いに行こう」

 言うなり、ゼファはさっさと先に立つ。 

 細い路地に入って幾つか曲がり、また広い通りに出て、その道に面した店に入った。

 看板には『柘榴亭』と書かれ、割れた果実から赤い実が零れる絵が描かれている。

「おじゃましまーっす。ミレイ、いる?」

「いるわよぉ!やーだゼファ、遅かったじゃなーい!」

「ごめんごめん、思ったより時間かかってさぁ」

「ん、もう、あたしが預かってるの忘れて、家に帰っちゃったのかと思ったわよぉ」

 柘榴亭はどうやら食堂兼酒場のようだ。給仕らしい女性が独特の甘ったるい声で愛嬌を振りまいた。

 胸も尻もたっぷりとした、かなりの美人だ。

 厚ぼったい唇を尖らしてゼファに文句をつけてから、あら、と声を上げた。

「なぁに、お客様連れてきてくれたのぉ?観光の方?デルフィカにようこそ!」

「ちがうちがう。ミレイ、こちらはお医者様」

「ええ?」

「デルフィカに来た新しい医者の先生だよ」

 きゃあ、とミレイが歓声を上げる。その豊かな身体が跳ねるようにリベルテに飛びついて、天井に響き渡るような音を立てて両頬にキスをした。

「いらっしゃぁい、先生!待ってたのよ、ホントに!」

「あ、あの…ッ」

「んもう、前の先生なんてすっごいやなクソ親父でねぇ、あたしの母さんが行ってもろくすっぽ診もせずに適当な薬出してたんだから!お若い先生はそんなことしないわよねぇ?」

「し、しません……あの、ちょっと、離れて」

 ミレイの肩越しではゼファが笑い転げている。どうにも掴みがたい男は、笑い上戸でもあるらしい。

「あたしの母さんねぇ、ちょっと持病があって!お医者様が来てくれないなら下の町に移らなきゃいけないかしらって、悩んでたのよぉ!先生、開院はいつ?もう開いてるのかしら?」

「いえ、まだです。ですが、病気の方ならいつでも診ます。お母様はご在宅ですか?」

 ようやくリベルテから離れて、ミレイが嬉しそうに笑った。

「だいじょぶよ、いますぐにどうこうっていう病気じゃないから!先生が開院したらすぐ行くわぁ」

「そうですか……とりあえず、明日の朝からはもう診療所を開こうと思っています」

「じゃ、明日、午前中に行くわね!」

 そう言って、跳ねるような足取りでミレイが厨房へと引っ込む。ゼファが手招いて、二人は一番奥の窓際の席へ座った。

「ここの料理は美味しいんだ。看板娘は美人だし」

「そうですね。とても綺麗な方です」

 にやっ、とゼファが癖のある笑みを浮かべる。ちょいちょいと指で招かれたので顔を近づけると、耳元にこそっとゼファがささやく。

「先生、気に入られたみたいだからな。上手くすればいずれ暖かいベッドにもありつける」

「は?」

「ミレイは肌が綺麗で触り心地が良いし、なかなか巧くて楽しませてくれるんだ」

「……!」

 色事についてだ、と気付いてリベルテは赤面した。

 ゼファがまた爆笑する。そんな笑い方も格好良いと思わせるのだから、色男は得だ。

「あ、あの…ッ」

「まあまあ、覚えとくと良いって。得だからさぁ」

「と、得とか損とかいうことじゃありません…!!」

「得ってなんのことぉ?」

 独特の口調が後から聞こえて、リベルテは思わず下を向いてしまった。こんな話題の間に当の本人が目の前に来て平然としていられるほど神経は太くない。

「先生がこの町で診療してくださるって事が先生にとって得か損か、ってことさ。お、ありがとうなミレイ」

「いいのよぉ。とっても可愛いし、近くでたくさん見れて嬉しいわ」

 ギィ、と人間ではない声が間近でして、慌ててリベルテは顔を上げた。途端にすぐ間近にある黒々とした眼とかち合って、思い切りのけぞる。

「う、わ…ッ」

 ミレイの手が背もたれを支えてくれなければ、危うく椅子ごと柘榴亭の床に転がるところだった。

「あ、ありがとうございます」

「どういたしましてぇ。うちの椅子、ちょっと安定悪くって」

 ゼファがにやにやしながら向かいの席でリベルテの慌てようを楽しんでいる。絶対この驚き方を楽しむために言わなかったのだ、この男は。

 もう一つの椅子の背もたれにとまっていたものが、ばさっと羽ばたいてゼファの腕に移る。

「紹介するよ、リベルテ。これがオレの相棒だ」

 眼の覚めるような青い色。紫と濃い緑の差し毛、頬の赤がとても美しい。頭には立派な冠羽根が生えている。

 嘴も、爪も、本気で怒れば肉をえぐり取りそうなほどに鋭かった。丸いぎょろりとした眼がぱちくりと瞬いて、またキィッと鳴いた。

「……と、鳥ですか…?」

「そう。オレの相棒、鸚鵡《オウム》のゲルダ。よろしくね」

「………」

 まじまじとリベルテはその鳥を観察する。

 青い羽根の色も、すらりと伸びた尾も、曲線を描いた嘴も、とても美しい。鸚鵡と言うには嘴がまっすぐで眼が大きいが、リベルテは特に鳥に詳しいわけではないので種類などはよくわからない。

 けれどゲルダは、鸚鵡と言うにはどこかに据わりの悪い違和感を感じさせる鳥だった。

 リベルテが観察しているのと同じ眼で、鳥もリベルテをじろじろと見ていた。

「ほら、ゲルダ。こちらはリベルテ、お医者様だ」

「リベルテ」

 ゲルダの口から不意に名を呼ばれて、びっくりした。

「は、はい」

「リベルテ。リベルテ。オ、オ、オイシャ。ヨロシク、ヨロシクネ」

「は、はい。こちらこそよろしくお願いします、ゲルダ」

「ヨ、ヨヨヨ、ヨロシ、ヨロシク」

 からかうような口調でそう言って、ゲルダがばさりと羽根を広げた。その大きな羽根の内側の色は背よりも薄く、まるで空のような色をしている。

「ずいぶん、大きいんですね」

「ああ。ゲルダは、伝書鸚鵡なんだ」

「伝書鸚鵡?」

「皇都との連絡用さ。緊急の時は、コイツが手紙を運んでくれる」

「なるほど……」

 相棒、とゼファが呼んだ意味が分かった。

 ここから皇都セルリアンまで、列車よりも速く連絡を付ける手段は確かに必要だろう。鉄道は線路に不具合があればすぐに走れなくなってしまうものでもあるのだ。

 二人が話しているうちに、ミレイが食事を運んできてくれた。

「ほらっ、おまちどお。豚肉とトマトと茸をたっぷり煮込んだシチューに、柘榴亭特製バターパン、バジルのサラダと新じゃがの丸よぉ。じゃがいもは塩で食べてね、美味しいんだから」

「ああ、ありがと!ミレイ!腹が減ってたんだよねぇ」

「どぉぞぉ」

 空腹には勝てないのでリベルテとゼファは湯気を立てる美味しそうな料理にさっさと手を伸ばした。ゲルダは小首を傾げたり独り言を言ったりしつつ、大人しく窓枠に止まっている。

 シチューはじっくりと煮込んだ深みのある美味しさで、パンは香ばしさとバターの甘味がすばらしかった。

 ジャガイモは小振りで、皮も丸ごといける。

「……おいしいでしょ」

「はい。……温かい料理を久しぶりに食べました」

「なんか美味しいものが食べたくなったら来ると良いよ。この町ではここが一番だ」

 飲み物を運んできたミレイが、あんまり大袈裟に言わないでよぉと笑った。

「美味しいお店は他にもいっぱいあるからね、先生!せっかくデルフィカに来たんだから色々食べてね。オススメは、食べ歩きできる鉱山焼きよお」

「鉱山焼き?」

「広場とかで良く屋台で売ってるわぁ。小麦粉と玉子の生地の間にキャベツとかトマトとかお肉とかくるんで、食べ歩きできるのよ。それで、どこが鉱山焼きかって言うと石をすりつぶしたのがかけてあるの」

「石?」

「そお。薬にも使うでしょ」

「まあ、確かに……」

 孔雀石や黄鉄鉱、紫水晶などは薬としてもよく使われる石だ。

 毒でなければ鉱物を食べても別に害はないが、それで鉱山焼きとはよく考えたなと感心してしまう。

「石の種類は選べるのよぉ」

「へぇ……」

 今度町を回るついでに買ってみよう、と決める。

 それでふと思い出した。

「あの。ゼファ」

「ん?」

「今日僕が乗っていた灰色の馬は、あなたの馬ですか?」

 二頭の馬は庁舎からほど近い宿屋の厩舎に繋いである。

「違うよ。あの子は、農家からお借りしたんだ」

「では、あの馬を譲っていただくわけにはいかないでしょうか」

 山道を徒歩で行くには時間がかかりすぎる。これからは生活のための品や医療の道具などを町から運ばないといけないのだ。灰色の馬は気性も大人しく山道に慣れていたし、荷を運んでもらうには丁度いい。

「ああ、うん。一応そのつもりで連れてきたんだ」

「…そうなんですか?」

「ここでの生活には必要でしょ。先生、診療所に閉じこもり切りってわけじゃないみたいだし」

「……なにからなにまで本当にありがとうございます。それで、あの馬のお値段は…」

 ひょい、とゼファが指を二本立てて見せた。

「こんだけ」

「金二枚ですか」

 今それだけ持ち合わせがあっただろうか、と思っているとゼファが首を振った。

「違う違う。銀。先生、ものの相場もしらないなぁ」

「え、銀なんですか?」

 たしか皇都で見た馬は金で取り引きされていた気がするが。

 そう言うと、それはお貴族様仕様の血統正しい乗馬用のお馬様でしょ、と返された。

「おんなじ馬でも天と地ほど違うわけ。いや、どっちが良い悪いとかじゃなくてね」

「そういうものですか……」

 確かに皇都の馬とここの馬では同じ生き物なのかと一瞬疑ってしまうほど体格が違うが。

「じゃあ、銀二枚で。ゼファにお支払いすればいいですか?」

「いや。今度あの子が産まれた牧場に連れて行くよ。どうせリベルテも町だけじゃなくてあのあたりの家も回るつもりなんだろ?」

「あ、はい」

 町周辺に散らばっている家々の場所も把握して置かねば、いざというときに駆けつけられない。

「二アウラ《金》の馬なんて、めったにいないよ。リベルテの家はそんなのばっかりだったわけ?」

 ゼファの問いにリベルテはかぶりを振る。

「いえ。馬は、近くにはいませんでしたから」

「またまた。貴族だったら乗馬用に最低二、三頭は飼ってるもんでしょ」

「……僕が、貴族だというのはどうして?」

「そんなの見てりゃわかるよ。立ち居振る舞いも、言葉もね。どことなく世間知らずだし」

「……そうですか…?」

 それなりに世間を見てきたつもりではいたのだが、医学にばかり夢中でいたからだろうか。

 ほら、食べなよとゼファに皿を示される。

 慌てて掻き込むと美味しいシチューは少し冷めてしまっていた。話をし始めると食事の手が動かなくなるのも悪い癖だ。

「……確かに、血は半分だけ貴族です。けれど残り半分は庶民ですし、十二の頃から師について医の勉強をしていたのでそんなに貴族らしくはないと思うんですけど……」

「へぇ、そうなんだ。独学って言ったのはそういうことか」

 リベルテの言葉からおおよその事情を察したのだろう。

 貴族の愛人になった娘が片親のない子を産むことは、そう珍しくもない。

「……そういうあなたはどうなんです」

 自分のことばかりを聞かれているのはおもしろくないので、リベルテも反論した。

「あなたも貴族でしょう?ゼファ」

「どうして?」

「それこそ、立ち居振る舞いを見ればわかります。それに名に字《あざ》がついてる」

「まぁね」

 ひょい、と肩をすくめてゼファは肯定した。

 字、とは親と家に与えられる名以外に、この世に持って生まれいでる記号だ。

 リベルテには律、ゼファには開。

 皇国の長い歴史の間に血は薄れ人に紛れ、庶民にもこれを持つものはいるが、字を持つ人々は元を辿れば皆1つの血筋に帰ると言われている。

 最後に残ったパンを千切って口に放り込みながら、まあ同じようなモンだよ、とゼファは言った。

「しがない貴族の傍系さ。親戚のコネでようやく仕事にありつけたと思ったら、こんな僻地の監察役を押しつけられたわけ。まあこの仕事も、なかなか楽しいけどね」

「……たしかに楽しんでそうですね」

「まあね。デルフィカはいい町だし」

 ゼファの言う親戚と言う話が本当ならば、それは相当有力な貴族だろう。軽い口調で言ってはいるが、デルフィカの監察という仕事がセルリアンにとってどれほど重要かくらいはリベルテにもわかる。











 

 食事を片付けて外に出ると、陽はもう傾き掛けていた。

 大急ぎで食糧と飼い葉を買い込み馬に積んで、町のはずれまでゼファに連れて行ってもらった。ここからならどうやら診療所に一人で帰れるだろう。

「今日は本当にありがとうございました。ゼファ」

「いやいや。オレの仕事だし。まあ、また用事があったら行くよ」

「はい。まだお礼もしていないし、是非来てください」

 ゼファの明星の背にはゲルダがとまっている。そうしてみると本当に大きな鳥だ。羽を広げたら、馬の背くらいは覆い隠してしまうのではないだろうか。

「じゃあ、また。ゼファ。それに、ゲルダ、明星。ありがとうございました」

 灰色の馬の手綱を引いて、町の中心を後にする。

 少しずつ色を濃くしていく陽の中で並んで歩きながら、さて、この馬の名前をつけないと、とリベルテは考えていた。

 

 














「……どう思う?ゲルダ」

 ゼファの問いに青い鳥がキィッと鳴く。

「貴族だけど貴族じゃないね。アレは」

「やっぱそう思うか」

「そりゃぁそうさ。貴族なんてのは自分と家のことしか中に入れられない容量の低い脳味噌持ってて、前時代的で馬鹿でけったくそ悪い連中ばっかだ、お前も含めて」

「………スゲームカツクこのクソ鳥」

 クェックェックェッ、と羽ばたいてけたたましい笑い声をゲルダが上げる。

「アレも頭は固そうだけど少なくとも貴族じゃない。お前が心配してるようなことはないと思うけど?」

「まだちょっと警戒を怠るのは早いなぁ」

「好きにしろよ。それが犬の勤めだからな」

「……もうだまっとけ。さもないと焼き鳥にして喰うぞ」

「できるもんならやってみな」

 憎ったらしい口調でゲルダがそう言ったので、尾羽を思い切り引っ張ってやった。もちろん、その鋭い嘴で逆襲されるというおまけ付きだったが。

 











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