※こちらの小説はR18となっております。
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《2》









 ロロノア・ゾロは、すったもんだの上に新しく麦わら海賊団に加わった料理人の奇妙なくせに、割と早くに気付いていた。

 はじめに見たのはローグタウンを出航したばかりの食事の時だ。

 二度目は、狩り勝負のトカゲの肉を料理したとき。

 それからも時折そんな姿を見かけることがあって、そのうちようやく気がついた。

 ありゃあくせじゃなくて、まじないだ。

 
















 

「そりゃあ、なんだ」

 ゾロが問うと、サンジは眼をぱちくりさせた。

「ああ?…シチューだが」

「そうじゃねえ。じゃなくてその」

 ゾロが炎を指さすとサンジはようやく問いの意味に気付いたようで、ああ、と言った。

 まだ空を舐める勢いのあるキャンプファイヤーの残り火に、ばかばかしい柄のシャツと金の髪が照らされてちかちかと橙に光った。

 仲間達は皆そこらにごろごろと転がっている。 

 まったく図太いものだ、神だオオカミだゲリラだとさんざん騒いでいたというのに。

「いつもやってるだろ」

「ん、なんだ気付いてたのか。マリモのくせに。こりゃあ、料理人のまじないだ」

「……」

 肉の一塊り、魚の一切れ。あるいは煮込んだ野菜、パスタやライス。

 踊る炎の中に放り込んで、炭になるに任せている。

 食い物を粗末にするんじゃねぇ、が口癖のコックの業とも思えない。

「とびきり良くできた料理の一欠片を、炎の悪魔に喰わせてやるのさ。働いてくれた礼に、もしくは怒らせていたずらをされないように、か」

「怒らせる?」

「美味い料理はいい火がなきゃつくれねえんだぜ?せっせと働いてくれたのに、ご褒美なしってのはあんまりだ」

 おどけた仕草でサンジが肩をすくめてみせるから、ばかばかしいとゾロは思わず失笑した。

「んだおまえ、信じてねえな?」

「別に。……あいにく悪魔とやらを見たこたねえが」

「眼に見えるもんだけがぜんぶじゃねえだろ」

「オレは自分の眼に見えるものしか信じねえ」

 ゾロの村にもたくさんのまじないがあった。

 けれど正月に神社にお参りをして、小さな巾着の形をした無病息災のお守りを大事に持っていたのに、くいなは死んだのだ。

 あれ以来ゾロは眼に見えないものを頼ることをしない。

 ふぅん、と唸ってサンジは煙草をくわえた。

 さっき炎の中に放り込んだ肉が乗っていた皿を隣の岩の上に置いて、いったんくわえた煙草を口から離し、焚き火に寄せる。

 火はすぐに点いたようだった。

「まあ、テメェが信じようと信じまいと勝手だけどよ」

「………」

 ふぅ、と美味そうにサンジが煙を吐き出した。

 紫煙はすぐにほどけてジャングルの空に溶けていってしまう。

 夜は更けて、歌声はいつの間にか寝息といびきの大合唱だ。

 お前ももう寝ろよ、とサンジが頑是無い子供に言うような口調で言ったので、なんとなくむっとした。

「テメェに言われるまでもねえ」

「なにイラッときてんだ。夜更かしに慣れてねえから言っただけだろ、明日は働くんだしな」

「………」

「オレだって片したら寝るさ」

 そう言って、くわえ煙草のままサンジは立ち上がった。

 散らかった食器だの食べかすだのを一つ一つ拾い集め、その間にちょこちょこと残っている食べ残しを片づけている。

 全部を見届けずにゾロはごろりと地面に転がった。

 最後に見たのは小さくなった炎に灰をかけて置き火にしようとしているサンジの姿で、なるほど料理人という職業は自分などよりよほど火に近いのだろうなと思う。

 あの千変万化に踊る形に悪魔を見いだすのも頷ける。

 そんな風に考えたのはほんの一瞬で、ゾロはすぐ寝息を立て始めた。

 


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